宮野夫妻の火災事故に隠された真実


(名探偵コナン96巻File:11 ©︎青山剛昌/小学館)

【概要】
・今回のテーマは「宮野夫妻の火災事故に隠された真実」です。多くの方がご存じだと思いますが、宮野夫妻とは灰原こと宮野志保の両親のことです。この二人は作中でほんの少ししか登場していませんが、ピスコの発言「事故死したご両親も…」(24巻)と灰原の証言「父と母の研究所が火事になって薬の資料とともに焼死したのよ…、組織の人からは不運な事故だったと聞かされていたけど…」(89巻)から二人の死因は火災による事故死とされています。
・しかし当時の宮野夫妻の状況・二人の人物像・事故の前後で起きた大きな事件を踏まえると、この事故にはある真実が隠されているのではないかという疑惑が浮かび上がってきます。その疑惑を探究していきます。

【真相を考察するための準備】
まずは当時の事故について深く考えるために「事故が起こる前の宮野夫妻の状況・宮野夫妻の人物像・事故の前後で起きた大きな事件」の3つを作中から読み取っていきます。

⑴事故が起こる前の宮野夫妻の状況
①組織(烏丸グループ)の研究室に入ったきっかけ(19年前)
宮野夫妻は初めから烏丸グループの研究室に配属していたわけではありません。実際『95巻File.8あの女性の記憶』で二人が宮野医院を経営している様子を見ることが出来ます。そしてこの時の二人の会話から宮野厚司は自分の研究をバックアップしてくれる烏丸グループの研究室に所属することをためらっていたが、エレーナの妊娠(志保を妊娠)をきっかけに烏丸グループからの提案に前向きになっていたことが読み取れます。また『96巻File11大人びてる子』より灰原の「町医者時代も例のグループから勧誘され続けてて…父は何度も断ってたらしいんだけど…何かのきっかけでそのラボに…」という発言を合わせて考えると、宮野夫妻は志保の妊娠がきっかけとなって厚司の研究をバックアップしてくれるという烏丸グループのラボに所属したということになります…。切ないですね…。一度整理しておきます。
(まとめ)
「宮野医院を経営していた宮野夫妻は約19年前に志保の妊娠をきっかけに、厚司の研究をバックアップしてくれるという烏丸グループの研究室に所属することになった」

②同級生に会いに「出島デザイン事務所」へ(19年前)
二人の当時の状況を垣間見ることができるポイントがもう一点あります。(41巻File10)宮野厚司は親から受け継いだ家を30年前に同級生「出島荘平」に貸していました。そして生まれ変わった家「出島デザイン事務所」に実は約20年前に訪れて一泊しています(同級生に大事な話があったが、あいにく出島さんは外出中だった)。この約20年前という情報だけでは組織に入る前なのか後なのかはっきりしませんがコナン達が訪れた時「当時事務所の前にはスモークガラスの黒い車が停まっており、宮野厚司はなぜか常に窓の外を気にしていた」と事務所の人が証言していたことから、宮野夫妻を組織の人間が監視しており厚司もそのことに気づいていたのでしょう。監視に気づいていたということはすでに宮野夫妻も烏丸グループの黒い側面に気づいていたのではないかと思います。時系列を考えると事務所に訪れた時には当然組織の研究室に加入したあとだったことになるので、この出来事は①の宮野医院の話の後であり志保がまだいなかったことからおそらく19年前の出来事だったと見てよいでしょう。
(まとめ)
「烏丸グループの黒い実態に気づいていた宮野夫妻は自由な行動が許されず監視付きで行動していた。19年前、同級生の事務所に一泊するがあいにく同級生は外出しており大事な話は出来ずじまい」

③組織のラボで研究を引き継ぐ(19年前)
志保を妊娠したことをきっかけに自身の研究をバックアップしてくれるという組織のラボに加入することになった宮野夫妻。しかし彼らを待ち受けていたのは恐ろしい現実だった…ことは想像するに難くありませんがそれを裏付ける哀ちゃんの発言があります。灰原の発言「まさか言えるワケないわよね…行った先で父と母が作らされていたのは…私と工藤君を幼児化させた薬だったなんてね」(96巻)より、宮野夫妻が研究していたのはコナンや灰原が服用したAPTX4869だったことがわかりますが、もう一つ注目すべき点は「作らされていた」という表現です。 厚司は自分の研究をバックアップしてもらうつもりで研究所に行ったわけですから、創薬を強制させられていたという表現はこの烏丸グループの勧誘の文言とは一致しません。つまり組織は研究をバックアップするという名目で宮野厚司を誘い出し、それを承諾した宮野夫妻を騙して研究所に隔離し、組織が行っている研究を強制させていたこともここから読み取れます。あまりにも狡猾ですよね…。二元ミステリーでベルモットが「こんな愚かな研究を引き継いだ両親を恨むのね…」(42巻)と発言していることからも、二人は厚司が試みていた研究(夢)ではなく組織が行っていた研究(極秘プロジェクト)をさせられたいたと見て間違いないでしょう。
(まとめ)
「宮野夫妻は厚司の研究をバックアップしてくれるという烏丸グループの勧誘を信じてラボに入ったがそれはウソだった。実際はラボで自身の研究でなく「組織の極秘プロジェクトの研究=APTX4869の研究」を強制させられていた」

④研究を進める(18~19年前)
宮野夫妻が引き継いだ研究の内容はAPTX4869を開発することだったことはわかりました。次にその研究の詳細を確認していきます。APTX4869の生物学的なメカニズムはピスコに閉じ込められた酒蔵で灰原が説明しているように(24巻)「アポトーシスを誘導する=細胞を自死させ、細胞の量を減らすこと」と「テロメラーゼ活性させること=細胞分裂に必要なテロメアを伸長させ、細胞の増殖速度を高めること」を同時に引き起こすという方法(難しいので無視しても大丈夫です)であることがわかっています。さらにピスコの発言「素晴らしい!、…まさかここまで君が進めていたとは…事故死したご両親もさぞかしお喜びだろう」(24巻)から、宮野夫妻が最終目標としてた効果幼児化のように時の流れに逆行して若返る効果であることは概ね正しいと思います。しかしこのピスコの発言「素晴らしい!…まさかここまで…」から宮野夫妻の研究はこの目標からまだほど遠い成果しか得られていなかったことも読み取れます。宮野夫妻が研究をしていた期間が「志保が妊娠3ヶ月の時から志保が生まれてすぐに起こった事故まで」=約1年弱という(研究にしては)短い期間だったことからもめぼしい結果が得られなかったのは当然といえば当然ですし、研究はあまり進んでおらずAPTX4869は完成からはまだまだ遠い未完成な状態で彼らは最後の時を迎えることになったのだと推測されます。
(まとめ)
「宮野夫妻が強制させられていた研究はAPTX4869の開発であり、その最終目標とする効果は幼児化に近いものだった。しかし二人の研究期間は約一年ほどで短く、研究はあまり進んでいなかった」

⑤研究所の火災事故(17~18年前)
ピスコの発言「君はまだ赤ん坊だったから…」(24巻)や灰原の発言「私が生まれてすぐに死んじゃて…」(38巻)や灰原の発言「父と母の研究所が火事になって薬の資料とともに焼死したのよ…、組織の人からは不運な事故だったと聞かされていたけど…」(89巻)から、「志保が生まれてすぐ=17~18年前」に二人は火災事故により亡くなったということになります。事故というのが真実かどうかはわかりませんが、焼け残った資料が実際に存在することやピスコの証言からも灰原がまだ赤ちゃんだったころに火災によって亡くなったのは真実なのだと思います。研究がまだまだ未完成の段階で、この世を去った二人の火災事故ですがここには何が隠されているでしょう…
(まとめ)
「宮野夫妻は17~18年前に研究室の火事により亡くなった。事故だったとされている」

⑵二人の人物像
①父:宮野厚司
・阿笠博士(38巻)「自分の発明を褒めてくれた気さくで感じのいい男」だと証言していることから、性格社交的で優しい人物だったことが読み取れます。実際、95巻の初登場シーンからも温厚そうな様子や人見知りのエレーナが心を開いた人物であることからも博士の証言は間違いないでしょう。
・しかし研究内容には賛否両論あるみたいです。阿笠博士には自分の研究内容を語ってはいなかったようですが学会からは「マッドサイエンティスト」と叩かれており、95巻の登場シーンでもその点について気にしているようでした。しかし妻のエレーナは厚司の研究を「あなたの夢なんだからそう簡単にあきらめないで!」と評しており、研究を応援しています。ここからは研究内容を具体的に知ることはできませんが、魅力的な面がある一方で科学者から馬鹿げていると非難されるような両面をもった研究だったことがわかりますね(あまりにも斬新すぎるものだったとか、成功すればよいが大きなリスクを伴うものだった?とか…)
「宮野厚司が行っていた研究は組織の研究とは異なるものだと推理しましたが、何らかの関係はあったと思います。新たな謎が生まれてきました」

②母:宮野エレーナ
・阿笠博士やデザイン事務所の人の証言(38巻・41巻)からエレーナは「無口で、他人から声をかけられても無視するような暗い人物だった」という人物像が見受けられますが、95巻の初登場シーンで厚司の発言により「患者とも最低限のことしか話さない人見知り」だったことや心を開いている厚司や少年時代の安室には気兼ねなく話す明るい面もあることがわかります。さらにデザイン事務所に隠された遺品をコナンが見つけたことにより、エレーナの母としての人物像も見ることが出来ます。その遺品とは「エレーナが志保のために残した誕生日を祝う20個のテープ」です。コナンがエレーナを正真正銘のエンジェルと言っているように、この行動からは娘志保に対する母エレーナの愛が感じられます。
・このように人見知りという性格がある一方で明るい面や娘への愛をもっているエレーナですが、灰原の発言「知ってる?私の母が組織で何と呼ばれていたか…ヘルエンジェル…地獄に落ちた天使」(41巻)から組織ではヘルエンジェルという異名をもっていたことがわかります。言葉だけ聞くととても不気味な感じがしてきますが「ヘルエンジェル=地獄に落ちた天使」ですからこれはエレーナの状況を揶揄した表現だったのではないでしょうか。具体的に説明すると地獄とは宮野夫妻が薬を強いられていた組織の研究所という檻(おり)のことであり、天使とはエレーナの本質を表していた、つまり地獄に落ちた天使とは「優しさと愛をもっていた女性エレーナが烏丸グループの勧誘を引き受けたことで組織の研究室という地獄に隔離されてしまった」という意味だったのではないでしょうか。
・裏を返せば組織の研究室という地獄に落ちる前のエレーナは(コナンの予想通り)他人からエンジェルと思われる人物だったことがわかります。エンジェルという言葉がどのような意味で使われていたかは正確にはわかりませんが、その意味を推理するための大きなヒントがあります。そのヒントとは「組織の人間であるベルモットが蘭をエンジェルと呼んでいること」です。ベルモットはなぜ蘭をエンジェルと呼ぶようになったのでしょうか、それは多くの方がご存じの通り階段から転落しそうになった(通り魔に化けていた)ベルモットを自身が殺されることも省みず必死に助けようとしたから、ですよね。つまりベルモットは「蘭に宿る自身の命よりも他者の命を優先する精神(愛のようなもの)」に感動して蘭をエンジェルと呼ぶようになったわけです。この点や志保の残したテープから推測すると、エレーナも「自分の命・幸福よりも他者の命・幸福を優先する精神をもった人物」だったのではないでしょうか。
「人見知りでありながらも明るく愛にあふれた人物、そんなエンジェルが騙されて落とされた地獄が組織の研究所だった、まさに堕天使ですよね…」
~補足~
ベルモット編の最終局面で灰原は自身の命を省みず灰原を守ろうとした蘭の姿を灰原の姉である明美に重ねています。エレーナの精神がどこまで娘に遺伝しているかはわかりませんが、エンジェルである蘭を明美に重ねている描写はその母であるエレーナも蘭と同じエンジェルの精神を持った人物であったことを示唆しているのかもしれません。

⑶事故の前後で起きた大きな事件
⑴で宮野夫妻が亡くなったのは17~18年前だったことを推理しました。この時期で起きた大きな事件といえば、多くの方がご存じの通り現在進行しているラム編のおいて最重要かつ最難関のミステリー「羽田浩司殺人事件」ですよね。
〈羽田浩司殺人事件〉
「羽田浩司殺人事件」とは17年前に起きた未解決事件であり、宮野夫妻が亡くなったタイミングと妙に重なっています。そしてこの事件では殺害された羽田浩司は直接の死因が不明であり、APTX4869被験者リストに名前があったことから死因はAPTX4869を飲んだことによるもの、よって犯人は組織の人間であることがわかっています。果たしてこれは偶然でしょうか…?
「現在進行中のラム編ではラムの正体は一体だれなのかという謎だけでなく、17年前の羽田浩司殺人事件の謎はもちろん、物語の根幹にかかわってきそうな宮野夫妻の事故の謎までも複雑に絡んできそうですよね」

【真相を考察】
それではここから本題の「火災事故に隠された真相」を考察していきます。
⑴「APTX4869リスト」に隠された闇
①APTX4869被験者リストの痕跡
APTX4869被験者リストには「工藤新一」のように灰原が作った未完成のAPTX4869の被験者以外にも宮野夫妻が開発していた未完成のAPTX4869の被験者の名前も載っていました。そう、それは17年前に亡くなった「羽田浩司」です。つまり組織は現在灰原が作ったAPTX4869を毒薬として使用しているように、17年前にも組織をAPTX4869を毒が検出されない完全犯罪を成しえる毒薬として宮野夫妻が開発したAPTX4869を使っていたという事実が読み取れます。しかしここで一つ疑問が生じます。
「宮野夫妻は当時自分達が開発していたAPTX4869の使用を許可したでしょうか?」

②未完成のAPTX4869を組織が勝手に悪用
【考察の準備】で確認してきた通り、宮野夫妻は一般的な良識をもっている善人であり優しさや愛のある人物でした。そんな二人が開発途中のAPTX4869を毒薬として用いることを許可したはずがありませんし、まして研究は目標とは程遠い成果しか出てない段階であった可能性が高く、そんな危険な実験を一般人で試したとは到底思えません。しかし未完成のAPTX4869を毒薬として用いていた事実があったということは、組織は開発者である宮野夫妻の目を盗んで勝手に毒薬として用いていたということが見えてきます。これはジンが灰原の作っていた未完成のAPTX4869を勝手に完全犯罪を成しえる毒薬として工藤新一に用いていたこととも符合しますよね(㊟灰原は「毒なんて作っているつもりはなかった」とコナンに言っていた)
「では宮野夫妻は開発途中の薬が毒薬として悪用されていたという事実に気づいたでしょうか?」

⑵宮野夫妻のターニングポイント=羽田浩司殺人事件
①宮野夫妻は悪用に気づいたか?
宮野夫妻は灰原がやっていたのと同様にマウスなどで動物実験を行っていたと考えられます。よって二人は未完成のAPTX4869が死体から毒が検出されない毒薬になりえることは当然知っていたでしょうし、開発していた薬の数と実験をしたマウスの数が合わないことに気づけば疑う余地もあったでしょう。しかしこれらの説明は組織が毒薬として悪用していることに気づく事実がいくつかあったことを示しているに過ぎないので、実際に宮野夫妻がそれらに気づけたかどうかは判断できません。「ですがもし外的な大きな要因があったとしたらどうでしょうか?」

②羽田浩司殺人事件が疑惑の引き金に?
17年前に起こった羽田浩司殺人事件では当時七冠王に最も近いといわれていた将棋の天才「羽田浩司」がアメリカで何者かによって殺害されましたが、なぜか直接の死因が不明という不可解な事件。羽田浩司は(藤井聡太のように)超がつくほどの有名人だったと思うので、彼が原因不明の方法で殺されたとなれば当然世界でも大々的に報道されたでしょう。となると研究所にいた宮野夫妻の耳にもその情報は入っていたと思います。さらにこの事件は黒の組織にとっても大きなニュースでした。なぜならジンが発言しているように、この事件では組織のナンバー2であるラムが何らかの失敗を犯しているからです。宮野夫妻に組織の情報がどれくらい入っていたかは未知数ですが、世間で報道された情報とこの事件に組織が関与しているということを宮野夫妻が知ったとすればそれは自分達の未完成のAPTX4869が毒薬として使われているのではないか?という疑惑を持ち始める引き金になったのではないでしょうか。一度のその疑惑が生まれれば、宮野夫妻はその疑惑を検証していくでしょうし、その過程で「APTX4869被験者リスト」にたどり着いつくorラボのメンバーに薬を横流ししている人物の犯行を映像に収めることができればその疑惑は確信に変わったでしょう。
「またこの仮説に通じるAPTX4869リストの未解決の謎が存在します」

③工藤新一の二つ下に羽田浩司の名前があった謎
・本筋と少し話がそれますが、灰原がこの事実(APTX4869被験者リストの工藤新一の2つ下に羽田浩司の名前があったこと)を思い出した事をきっかけに、コナン達は羽田浩司殺人事件の調査をし始めました。この謎については灰原が「リストの管理者が殺した順ではなく血液型の順で並べていたのかも」と推理する程度で深く掘り下げられてはいませんでした。しかしそもそもリストの順番以前に不可解な点は「灰原が作っていた未完成のAPTX4869を投与した人物と宮野夫妻が作った未完成のAPTX4869を投与した人物を一つのリストでまとめて管理していること」です。確かに同じ研究内容ではありますが、開発者も開発時期も10年以上の違いがあります。組織がその違いを無視してごちゃませに人物を並べるとは思えないので、リストの順序は灰原が最初に言っていたように「殺した順に並べられている」のではないでしょうか。殺した順に並べて上から更新されていくようにすれば開発者が異なる薬の被験者が混ざらなくて済みます。というのも工藤新一より上の人物は灰原が作ったAPTX4869を飲んだ人物であり(ジンの発言から「灰原の作った未完成のAPTX4869を毒薬として使ったのは工藤新一が初めて」ということがわかっています)、それより下の人物「豊田稔、羽田浩司…」は宮野夫妻が作った未完成のAPTX4869を飲んだ人物であるとシンプルに判別できるからです。
・話を本題に戻します。このようにリストが管理されていたならば宮野夫妻の開発途中だった未完成のAPTX4869は羽田浩司・豊田稔を境に灰原が復活させるまでの17年間の間、毒薬として使えなかったことがわかります。その理由こそが研究側での想定外のアクシデント、すなわち「開発者である宮野夫妻に未完成のAPTX4869を毒薬として悪用されていることに気づかれかれたこと」だったのではないでしょうか。このように考えるとAPTX4869リストの不可解な順番とその間の17年間の空白の謎も解けますし、なぜ羽田浩司が(宮野夫妻が作った)未完成のAPTX4869を飲んで死んだ直後にリストのデータが更新されなくなったことも説明できます。
「羽田浩司殺人事件をきっかけに真実に気づいた二人の反抗を組織が強制的に抑圧したあとで被害にあった人物が豊田稔だったのかもしれません」

⑶火災事故に隠された真実
①宮野夫妻の反抗
宮野夫妻のこれまでの経緯を振り返ると、宮野夫妻は騙されて烏丸グループのラボに入り、自分がしたかった研究(=厚司の夢)ではなく組織が行っていた極秘の研究(=APTX4869の開発)をさせられることとなったわけです。しかし仕方なく始めた研究で開発されたまだまだ未完成のAPTX4869を勝手に悪用されました。しかもそれは完全犯罪を可能にする毒薬として…(あまりにも理不尽ですよね)。このことに気づいた宮野夫妻は組織の恐ろしさに気づきながらも当然反抗したでしょう。意図せずとはいえ組織の完全犯罪に一役買ってしまっていたわけですから、当然罪の意識やり場のない怒り覚えたと思います。しかし宮野夫妻の行っていた研究は組織が半世紀前から行っている重要な極秘プロジェクトですから、宮野厚司を研究に参加させるために所属していた白鳥製薬を権力で押しつぶしたように二人の反抗を抑圧して研究を強行させたと思います。その手段はいくらでもあったと思いますが、エレーナのテープで研究ではこどもと離れ離れになるように強制させられていた状況から察するに明美と志保を人質に取られていたのではないでしょうか。
窮地に追い込まれた二人にはどのような選択肢が残されていたでしょうか?

②「ヘル・エンジェル」の選択
・権力によって研究の続行を強制させられた宮野夫妻はどのような行動をとったのでしょうか。それを推し量るために一度宮野夫妻の状態を確認します。宮野夫妻は自分達が開発途中の未完成だった薬を組織が完全犯罪を成しえる毒薬として悪用しているという真実に気づきました。そして組織の恐ろしさを知りながらも反抗したが、(二人の娘を人質にとられており?)理不尽にも権力に屈服するしかありませんでした。しかしこのまま研究を続行すれば自分達が作った未完成の薬で何人もの人が証拠が残らない完全犯罪によって殺されてしまいます。つまり皮肉にも自分達が開発途中の薬が自分達をだました組織の犯罪行為を広げる切り札になってしまっているという状況です。宮野夫妻に残された切り札は組織が喉から手が出るほど欲しがっている完成したAPTX4869です。ですが【考察の準備】で確認していたように研究期間はまだ約1年ほどで完成には程遠い成果しかあげられておらず、薬を完成させるにはまだまだ時間が必要な状態でした。
・↑のような状況を考慮すると二人の目の前にあった道・選択肢はおそらく次の二つだったのではないでしょうか。
A.『薬の完成にはまだ長い年月がかかりそうだが、その月日の中で自分達の作った未完成の薬で死んでいく何人もの人の命を犠牲にしてでも組織が喉から手が出るほど欲しがっている切り札「APTX4869」を完成させて組織と対抗する
B.『自らの命を犠牲にして自らが生み出してしまった完全犯罪を成しえる「毒薬=
組織の犯罪の切り札」を消し去ることで、研究を続けることで自分達が作り出す未完成の薬によって死んでいく何人もの命を救う
ここで【考察の準備】で確認した宮野夫妻の人物像をもとに二人の行動を推理してみます。宮野厚司は気さくで温厚な人物であり、エレーナも人見知りな面もありますが明るく愛のある人物です。なので自分達が作っていた未完成の薬が完全犯罪に使われており、何人もの人を殺してしまっていたという事実は十字架のごとく大きな罪として自らの良心にのしかかっていたでしょう。さらに特筆すべきこととしてエレーナは「ヘル・エンジェル」という異名をもっています。【考察の準備】で確認したようにこのエンジェルという表現は蘭と同じようにエレーナが「自分の命よりも他者の命を優先する精神=愛」を持っていたことを表していると推理しました。
・これらのことを踏まえるて二人の行動を推理すると、意図せずではあるが自らが開発した薬によって何人もの命を奪ってしまったという罪の意識にさいなまれつつ組織に反抗する切り札さえなく窮地に追い込まれた二人は、エレーナに宿るエンジェルの精神に導かれる形でBの道を選択することになったのではないでしょか。
「エンジェルの精神に誘われ、歩むことになった二人の道の末路とは?」

③宮野夫妻の火災事故に隠された真実=宮野夫妻の自殺
エレーナが宿すエンジェルの精神に導かれた二人は、自分達が開発してしまい多くの人を奪ってしまった薬、組織の犯罪活動の切り札である未完成のAPTX4869・組織が30年にわたり培ってきた貴重な研究の資料・組織が研究を再開させるために会社をつぶしてまで手に入れた貴重な人材である自分自身の命を全て炎の中で消し去ることで、研究を続行することで奪ってしまう多くの命を優先する決意をした二人は研究所に火をつけた。それが窮地に追い込まれた宮野夫妻の最後の抵抗だったのではないでしょうか。
「リストでは実際にAPTX4869が使えなくなったことがわかっているので、二人の選んだ道により救われた命はきっとあったのではないかと思います」

~補足~
ちなみにエレーナのこの行動は志保の行動とよく共通しています。実際二元ミステリー編で灰原は事件現場に自らの足で赴き「自分の命を犠牲にするかわりに周りの人間には一切手を加えるな」ということをベルモットに訴えています。またミステリートレイン編では「自分に関わった他の人物の命を救うために、APTX4869の解毒剤を飲んで自分だけが犠牲になろう」としていました。ベルモットや赤井さんはこの行動を読んでおり、昴「さすがは姉妹だ、行動が手に取るようにわかる」と発言していることからも「自分の命よりも他者の命を優先する精神」は宮野一家の女性「エレーナ・明美・志保」に共通した性質なのかもしれませんね。


ここまで読んでいただきありがとうございました(*^^*)。今回は未だ真相がはっきりしていない「宮野夫妻の火災事故」について考察していきました、いかがだったでしょうか?考察の終着点はとても悲しい結末でしたが…、読んでいる方が少しでも面白いと思っていただけていたら僕は嬉しいです。個人的には89巻で再び宮野夫妻の事故死がフォーカスされたのはラム編の中で羽田浩司殺人事件と関連して真相が明らかになるからなのではないかと予想しています。つまり、この謎もラム編の中で答えが明かされるのではないでしょうか。
・話は変わりますが今回の考察をしている中でも新しい謎が生まれてきました。それは「宮野厚司が学会からマッドサイエンティストと叩かれた研究内容」です。宮野厚司がやろうとしていた研究は組織の極秘プロジェクトの研究とは異なるものだったことは今回の考察の中で推理しました。しかし関連はしていたと思うので、この謎はAPTX4869の研究ともつながってきそうですね。最近は主にラム編の伏線の考察をツイッターでつぶやいていましたが、物語の中核に迫る「あの方・ベルモット・組織の極秘プロジェクト・宮野厚司の研究・エレーナが言っていたシルバーブレットの真意」なども考察がまとまり次第ブログの方に挙げていこうと思います。 土ノ子


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