《羽田浩司殺人事件考察》 ピース編

【「羽田浩司殺人事件考察」ピース編目次】
(サンデーFile.1052©︎青山剛昌/小学館)

⑴羽田事件の関係者

〈補足:関係者の全体像〉
羽田事件の記事から殺害された羽田浩司・アマンダ、さらに事件以降失踪したアマンダの護衛役である浅香は関与していることが確定しています。またジンが「17年前にRUMが抜かった仕事(ころし)なんざしったことか」と発言していることから、RUMも羽田事件に関与していたとみて間違いないでしょう。さらに作中では言及されていませんが、羽田浩司は当時四冠王という名誉ある有名人物でした。なのでアメリカにわたるとなると当然一人ではなく護衛役がついていたと思うので羽田浩司の護衛役も記事では言及されていませんが、事件に関与していたと思います。
(まとめ)
「羽田浩司・アマンダ・羽田浩司のボディーガード・アマンダのボディーガード(浅香)・RUM」が事件関係者
次に各々の事件関係者に関する情報を整理していきます。


①羽田浩司

・当時将棋の四冠王だった棋士
・日本の資産家羽田家の息子(御曹司)
・趣味でチェスの大会に出場するため渡米したが、大会前夜に何者かによって殺害される
・右手には部屋にあった小さなはさみを握りしめていた跡があった
水道の蛇口がだしっぱなしだった
・体中に防御創があったが、直接の死因は不明
・殺害された部屋はかなり荒らされており、手鏡や食器が散乱していた
・羽田浩司が御守りにしていた将棋の駒「角」がなぜか現場からなくなっていた


②アマンダ・ヒューズ


・アメリカの資産家、80代の老婆
FBIやCIAにも顔が利く人物
・アマンダは羽田浩司の大ファンで交流があった
・羽田浩司の部屋のドアノブや食器やソファーにはアマンダの指紋があった
・アマンダの死因は不明
・アマンダが殺された部屋は荒らされていなかった


③浅香(=現在の若狭留美と推理している)


・アマンダのボディーガード
・アマンダが浅香を雇い入れた経緯はアマンダの家族も関係者も誰一人知らない
・羽田事件以降、浅香は消息を絶っており事件の最重要容疑者とみなされている
・写真に顔が写っておらず、写るのを拒んでいるような手ぶりが見える
・現場に残されていた手鏡を浅香がもっていたという目撃証言がある


④???(=現在の黒田兵衛と推理している)


・羽田浩司のセキュリティポリス(SP)


⑤RUM(現在のどの人物に当てはまるかは推理中)


・黒の組織(資産家烏丸グループ)のNo.2
・人物像は十人十色
影武者・腹心がいる可能性あり
・左右どちらかの眼球が義眼
・RUMは羽田事件における仕事(殺し)で何らかの失敗をした

⑵読み解ける「ピース」

『次に整理した情報から読み解けるピース(てがかり)を集めます。最後に得られたピースをつなぎあわせていくことで羽田事件の真相を一枚の絵として復元していきたいと思います(現状読み取れるピースでのみ復元するため、絵の鮮明度は低いと思いますがご了承ください)』

〈A.「羽田浩司」のピース〉

①羽田浩司の死因
これは灰原がAPTX4869投与者リストに名前があったと証言していることから、羽田浩司はAPTX4869を飲まされて毒殺されたとみてほぼ間違いないと思います。ここからさらに羽田浩司を殺害した人物は組織の人間だったということも見えてきます。
(まとめ)
羽田浩司は黒の組織の人間によりAPTX4869を飲まされ毒殺された

②羽田浩司が残したダイイングメッセージ

これは作中でコナンと赤井がともに読み解いた部分ですが、羽田浩司の右手にははさみを強く握りしめたあとがあったので、羽田浩司が何かを切っていた(切ろうとしていた)ことが読み取れます。では何を切ったのか?ヒントとなるのが蛇口の水道が流しっぱなしになっていたということで、実は水中では化学的な要因によりガラスをハサミで切ることができます(ケモメカニカル効果)。そこで現場に残されていた手鏡の切り取られた文字の方を並び替えると「ASACA RUM」というメッセ―ジが浮かび上がります。コナンと赤井は最初このようにメッセージを解釈しましたが、(羽田浩司がRUMを存在を知るとは思えないことなどを考えると)メッセージの真意はCARASUMAであったと考える方が自然であると赤井と工藤優作が結論づけました。自分も後者の推理が正しいと思っていますが、となると羽田浩司は「自分を殺害した人物の黒幕が烏丸家であったこと」を示していたということになります。よって羽田浩司は自分を狙う犯人の立場(烏丸グループからの刺客)に気づいていたということになります。
(まとめ)
羽田浩司は自分を襲った犯人が烏丸家(黒の組織)の人間であることを知っていて、そのことを手鏡に暗号として残した

③羽田浩司の部屋が荒らされていた理由
この点について灰原が「組織のやり方に反している」と指摘しているが①よりやはり羽田浩司を殺したのは組織の人物であるため、一見すると事実が相反しているように見えますが②を考えるとその理由がわかります。②で羽田浩司は手鏡を水中できりとりメッセージを残しました。しかしもし切った手鏡だけがその場に残っていたら不自然であり、なにかあると犯人に悟られてしまいます。よって割れた手鏡が不自然に見えないようにするためにはカモフラージュをする必要があり、羽田浩司はそのために食器を散乱させたのではないでしょうか。
(まとめ)
部屋を荒らしたのは羽田浩司本人であり、部屋を荒らすことで自身のダイイングメッセージに気づかれないようにカモフラージュした

〈B.「アマンダ」のピース〉

①アマンダの死因
これは羽田浩司と同様ですが、死因が不明=毒が検出されないAPTX4869によって毒殺されたと考えてよいでしょう。よってアマンダも組織の人間により殺されたということになります。
(まとめ)
アマンダは黒の組織のメンバーにAPTX4869を飲まされ毒殺された

②アマンダは優れたアメリカの探偵だったのでは?
アマンダは80歳以上の老婆ということでかなり高齢ではありますが、FBIやCIAに顔が利くという特徴をもっています。これは同様の特徴をもっているコナンを参考にするとわかりやすいと思いますが、アメリカの捜査機関や諜報機関の中でトップクラスであるFBIやCIAにも名が知られているということは、アマンダは現役時代に捜査や推理といった探偵的な能力に非常に優れている人物としてアメリカで有名だったのではないかと思います。どこかの機関に所属していれば「FBIやCIAに顔が利く」という表現の仕方ではなく「元○○所属」という書き方をすると思うので、工藤新一のように探偵としてアメリカで活躍していたのではないかと予想しています。
(まとめ)
アマンダは現役時代に(コナンのように)、アメリカの捜査局や諜報機関に名が知れ渡るほど優れた探偵として活躍していた。その活躍によりお金持ちとなり資産家となった

③アマンダ家の立場
前の考察からアマンダの本質は探偵という正義を貫く立場であり、資産家の中でも黒い(悪側)資産家である烏丸家とは対立するような立場だったのではないでしょうか。
(まとめ)
アマンダ家は「白い」資産家

④アマンダの部屋が荒らされていなかった理由
羽田浩司の部屋とは対照的にアマンダの部屋は全く荒らされていなかったことがわかっています。しかしアマンダは自身の部屋でAPTX4869を飲まされ毒殺されています。もし新一がジンに薬を飲まされた時のように抵抗できない状態にして飲ましたとするならアマンダの体に何かしらのが残るはずですが(殴られた跡やスタンガンの跡など)、記事ではそのような点が全く言及されておらずアマンダには外傷はなかったと考えてよいと思うので矛盾しています。
(まとめ)
アマンダは新一のように抵抗できない状態で薬を飲まされたのではなく、自ら飲んでしまった。つまりアマンダは信用していたある人物によってAPTX4869が入った飲料物を飲むように誘導されて毒殺されたため、部屋は全く荒らされていなかった

〈C.「羽田浩司とアマンダ」のピース〉


①羽田家とアマンダ家という2つの「白い」資産家
羽田浩司とアマンダ、この二人の関係はネット記事ではアマンダが羽田浩司の大ファンであり、羽田浩司との交流があったということしか書かれていません。しかしB-③で考察した通りアマンダ家は白い資産家であり、そのトップのアマンダが羽田浩司の大ファンでよく交流していたということはアマンダは羽田家を信頼しているとみて間違いないでしょう。さらに羽田浩司は今回の事件で烏丸家により消されているため、烏丸とは対抗する立場=正義側であったことはほぼ間違いないと思います
(まとめ)
羽田家とアマンダ家はともに「白い」資産家であり、「黒い」資産家である烏丸家(黒の組織)とは対立しているという構図になっている

②羽田浩司とアマンダ・ヒューズのお茶会(密会)
アマンダの指紋が羽田浩司の部屋のソファーや食器やドアノブについていたことから、羽田浩司とアマンダは羽田浩司の部屋でお茶会をしていたことがわかります。そもそも羽田浩司はアマンダと元から交流があり、趣味でチェスの大会に出場するためにアメリカに渡っただけなのにアマンダが羽田浩司の泊まるホテルと同じホテルに泊まっていたということを考慮すると、このお茶会の目的が「ただ談話をしたいだけ」とは考えにくく、何らかのはっきりした目的があったように感じます。すなわち「アマンダが羽田浩司の大ファンといったこと(本当にそうなのかもしれませんが)+羽田浩司がチェスの大会に出場するためにアメリカにわたった」というのは実はアマンダと密会をするための口実だった可能性が高くなります。ここでA-②で生まれた疑問「なぜ羽田浩司は犯人が烏丸家の人間であることを知っていたのか」ということを考えると、この密会ではFBIやCIAにも顔が利くような情報通のアマンダが「烏丸家が行っている黒い噂・悪事や羽田浩司に迫りうる危機」を事前に忠告していたのではないかという線が見えてきます。
(まとめ)
二人のお茶会は単なるファンとの交流という談話ではなく、「白い」資産家に対して迫る危機をアマンダが羽田浩司に忠告するために意図的に催された密会だった。


〈D.「浅香」のピース〉


*17年前の浅香=現在の若狭留美、という推理を前提としています*
17年前の若狭留美について考察
①浅香という偽名
アマンダのボディーガードは自分自身のことを浅香と名乗っていたことはアマンダの関係者からの証言で確定しています。しかしこれは偽名の可能性が極めて高いです。そもそも羽田浩司が残したダイイングメッセージは「CARASUMA」が本来のメッセージですが「ASACA RUM」とも並び替えることができるという非常に珍しいアナグラムとなっています。しかしこれは偶然にしてはあまりにも出来すぎているため、必然だったのだと考えられます。どういうことか説明すると、一見浅香とRUMを組み合わせてCARASUMAという文字が作れたように見えるが、そもそも浅香という名前自体が「CARASUMA-RUM」を並び替えて作った偽名だったということです。ということは浅香と名乗っていた人物は黒の組織のNo.1=烏丸蓮耶・黒の組織のNo.2=RUMを知っていたということになります。よって浅香という人物は黒の組織に非常に精通している組織の幹部だったということが読み取れてきます。
(まとめ)
浅香という名前は「烏丸ーRUM」という引き算で作られた偽名であり、浅香は組織のNo.1とNo.2を知っているほど組織に精通している組織の幹部だった

②浅香の正体
(《若狭留美考察》まとめというブログでも述べていますが)一つ上の推理をもとにすれば、浅香の正体は黒の組織の幹部でありアマンダ家にボディーガードとして潜入していた人物だったということが読み取れます。つまり組織からアマンダ家へのスパイということになります。ではなぜ組織はなぜアマンダ家へ潜入する必要があったのか、その目的について述べます。
(まとめ)
浅香は黒の組織からアマンダ家にボディーガードとして潜入したスパイだった

③浅香の目的
浅香は何の目的でアマンダ家に潜入したのでしょうか?今回の事件でアマンダが殺されているのでその目的は「アマンダの暗殺では?」と考えたくなりますが、アマンダを暗殺することが目的ならなぜわざわざ羽田浩司とお茶会をする日に殺されたのか理由が見当たりません。ボディーガードであればアマンダの近くにいれる機会はいくらでもあるので、アマンダを殺すタイミングはいくらでもあったはずです。このような矛盾から、目的はアマンダ暗殺ではないことが推理できます。では何だったのかといえば「アマンダは羽田浩司と交流があった+今回の事件でアマンダも羽田浩司も殺されている」ことを考慮すると、その目的はやはり羽田浩司を暗殺することである可能性が高いことが推理されます。羽田浩司は当時四冠王という名誉ある有名人であり、資産家の御曹司ということで警備は分厚いことが容易に想像されます。よって羽田浩司を狙うには警備が最も薄くなる瞬間を狙う必要があり、組織はアマンダとの私的交流を絶好のタイミングと捉えたのではないでしょうか。(誰が羽田浩司を殺したかは不明だが)結果的に羽田浩司は殺され浅香は逃走しています。この事件こそが目的に最も関係していると見ていいと思います。(なぜ組織が羽田浩司を暗殺する必要があったのかはあとのセクションで述べます)
(まとめ)
浅香は羽田浩司暗殺を目的として、かねてから羽田浩司と交流のあるアマンダの家にボディーガードとして潜入した

〈E.「アマンダと浅香」のピース〉


①アマンダが浅香を雇った経緯
アマンダが浅香を雇った経緯はなぜか伏せられていて、アマンダの関係者は誰も知ることができなかったことがわかっています。この部分はほぼノーヒントなので具体的な推理は難しいですが、アマンダが浅香を正式なルートではなく特別にヘッドハンティングしたということはアマンダが驚くほど浅香の防衛能力は優れていたということになります。またアマンダはB-②で推理しているように、かなり(元)切れ者だったと思うのでアマンダの同情を誘うような偽装工作をして、うまくアマンダに雇われることに成功したのだと推理しています。
(まとめ)
アマンダが驚くほど浅香の護衛能力は卓越していた。浅香はアマンダに雇われるために、同情を買うような偽装工作をした

②羽田事件における裏切り
B-④で、アマンダは信用していた人物にAPTX4869を飲むように誘導され誤って飲んでしまったということを推理しました。その信用していた人物とは、まさにボディーガードの浅香だったのではないでしょうか。「アマンダが事件当時に信用していて、アマンダに近づくことができる人間は浅香しかいない+もし浅香以外の組織の人物がアマンダに毒を盛ったのなら、ホテルの部屋のカギとボディーガードの二つを突破しなおかつアマンダに信用されて近づくことができたことになる」ということを考えれば、アマンダにAPTX4869を混入した飲料物を飲むように誘導して毒殺した人物は浅香ただ一人であることはほぼ間違いないと推理できるのではないでしょうか。
また若狭留美(=浅香)は山菜採りの事件で四つ葉のクローバーを捨てていますがこの行動の心理は、四つ葉のクローバーを受け取れないと拒否した犯人の先生が言った言葉「私は人を殺した悪い人だから、罪を償う前に幸せになっちゃいけないの」と重なっていると考えらますが、この罪というのは「過去に組織の人間として犯してきた罪自分を信用してくれていたアマンダを毒殺した罪」のことを表していて、今回のセクションを示唆している発言だと思います。

(まとめ)
浅香はアマンダにAPTX4869が混入した飲料物をアマンダが飲むように誘導して毒殺した。そして若狭が四つ葉のクローバーを捨てた描写はこの罪を示唆していると考えられる。



〈F.「羽田浩司と浅香」のピース〉

①羽田浩司を組織のターゲットになった理由
この部分は一見するとノーヒントに見えますがC-①がヒントになっているのではないかと思います。当時17年前の状況を想像すると、前提として羽田浩司は将棋の四冠王として非常に名誉ある有名人(現在の藤井聡太のような存在)であり、初志貫徹という信念を体現している魅力的な人物だったと思います。すると当然資産家としての羽田家の力は爆発的に大きくなっていたと考えられます。このような状況に対して、世界の金の流れを牛耳ろうとしている(=経済的な権力を握ろうとしている)烏丸家にとっては都合が悪く、資産家羽田家の力が自分よりも大きくなることを恐れたので先手をうつことになったのではないでしょうか。その具体的な手段が「羽田家の資産家としての株を急上昇させている一番の要因である羽田浩司を暗殺すること」だったのはないかと見ています。そしてその計画を実行しようとした中心人物が浅香とRUMだったのではないかと思います。
(まとめ)
烏丸家(=黒祖組織)は羽田浩司フィーバーによって上昇していた羽田家の資産家としての力を抑えるために、その一番の要因である羽田浩司を暗殺する計画を立てていた。

②羽田浩司を殺したのは浅香?
アマンダを殺した犯人は浅香であることを推理しました。また若狭留美の回想で羽田浩司にそれでも僕を殺すのですかと尋ねられるシーンがあることから、同様に羽田浩司を殺したのも浅香なのかなと思えてきますが、真相は違ったものだったのではないかなと思っています。そもそも浅香の現在の姿である若狭留美は羽田事件における羽田浩司を血や御守りという言葉から回想していますが、羽田浩司が吐血して倒れているシーンを思い出した途端に倒れこんでいます。よってこのシーンは若狭が意図的に羽田事件の状況を思い出したのではなく、自身にとってはトラウマである羽田事件の記憶がよみがえってきて苦しんで倒れこんだシーン(フラッシュバックによるパニックが起こった)だったと解釈するのが正しいのではないかと思います。よって若狭にとって羽田浩司が吐血して倒れていたことは17年たっても克服できないほど衝撃的な出来事だった(⇒想定外な出来事だった)と考えられ、この推理から浅香は羽田浩司を殺してはいないということが導かれます。また浅香=若狭留美ほどの武術の達人が羽田浩司を殺害したのなら、羽田浩司の腕などに複数の防御創が残っていたことに説明がつきません。浅香なら安室におこなったように一撃で羽田浩司を気絶させ、APTX4869で毒殺したでしょう。このような羽田浩司の死体の状況からも羽田浩司を殺したのは浅香ではないという線が濃厚だと思います。
(まとめ)
浅香は羽田浩司を殺していない。浅香のとって羽田事件はパニック障害を起こすほどのトラウマであり、羽田浩司が吐血して倒れていたことはショックな出来事だった。

③羽田浩司が御守りを通じて浅香に伝えたメッセージ
この章は過去の記事において詳細に述べているので参照してください「⑶-C」。結論は述べておきます。

(まとめ)
羽田浩司は自分の御守りである角に浅香の立場を投影し、羽田家と烏丸家の戦いを将棋盤での戦いに例えて浅香を諭した。

④羽田浩司が浅香に与えた影響
これまでの推理F-①~F-②を合わせて考えると、「浅香は羽田浩司を暗殺することを目的にアマンダ家に潜入した組織のスパイだったのにも関わらず、羽田浩司を殺してはおらずむしろ羽田浩司が吐血して倒れているシーンをトラウマとしてフラッシュバックしている」ということになります。ここから浅香はこの事件のあるタイミングで本質的に価値観が変化する瞬間があったのだと考えられます。そこでさらにF-③を考えると、そのタイミングこそが羽田浩司との対峙だったと考えられるのではないでしょうか。具体的には推理するのが難しいですが、「工藤新一がNYの通り魔事件でベルモットの黒い心を射抜いた」ように「羽田浩司こそが浅香の黒い心を射抜く言動をみせた」のではないかと考えています。補足として、若狭が四つ葉のクローバーを捨てたシーンは事件の犯人の「私は人を殺してしまった悪い人だから、罪を償うまでは幸せになっちゃいけない」という心理と重なっているものだと思うので、若狭は自身が行ったことを罪であると向き合っており、今はまだその償いができていない状態にあると認識していることがわかるため、若狭は自身の罪に向き合っていて過去の過ちを反省していることが読み取れるので若狭の現在の立場は正義側であると考えてよいと思います。
(まとめ)
羽田浩司こそが浅香の本質的な色(立場)を黒(悪・組織側)から白(正義・羽田家側)に変えた

⑤組織を裏切った浅香の偽装工作
①~④では浅香は羽田浩司により組織を裏切り羽田浩司側につこうと決心したと推理しました。となると浅香はどのようにして羽田浩司を守り、同行しているRUMを切り抜けるかということを考えたと思います。この部分を考えるヒントとして若狭=浅香は血の匂いから羽田浩司の死体を回想している描写があります。このシーンですが、普通自分が想定している範囲外の出来事で人が倒れていたら、その人物が血を流しているか流していないかということよりもその人物が倒れているという事実の方がインパクトが大きいのは明らかです。しかし若狭の回想では、17年も前の出来事にもかかわらず羽田浩司が倒れているということよりも血を流していたということの方に強いインパクトを感じているように思えます。ここから実は浅香にとって「羽田浩司が倒れていること」は想定内であったが「吐血していたこと」は想定外だったことと考えれます。さらに「羽田浩司は棋士であり武術能力はほとんどなかったであろうこと+防御創が腕に複数も残っていたこと」というピースを総合すると、この防御創というのは「羽田浩司と浅香が協力して羽田浩司を暴行し殺したように見せかける偽装工作をする際」にできたものだったのではないでしょうか。なので浅香はもともと羽田浩司が倒れているのは想定内だったが、吐血して倒れていることは想定外だったのではないかと考えています。
(まとめ)
組織を裏切ることに決めた浅香は羽田浩司を守るために羽田浩司殺害を偽装する工作を実行する。羽田浩司の腕にあった防御創はその偽装工作の際にできたものであった。しかし若狭が再び羽田浩司の下に戻った時には羽田浩司は吐血して倒れているという想定外のことが起きていて、衝撃を受けた。

〈G.「羽田浩司と黒田兵衛」のピース〉

*黒田兵衛=17年前の羽田浩司のセキュリティポリス(SP)と推理しています*
①黒田の回想
黒田がネットに上がっている羽田事件の記事を閲覧しているときに羽田浩司が倒れているシーンを回想していますが、この羽田浩司は吐血していません。よって若狭留美がフラッシュバックした羽田浩司の吐血して倒れているシーンとは別であることがわかります。よって黒田は、若狭が吐血して倒れている羽田浩司を目撃する前に一度羽田浩司が倒れている場面を見ていることになる。つまり黒田は何らかの理由によって羽田浩司を守ることができない状況にあったと見ていいと思います。
(まとめ)
黒田は吐血せず倒れている羽田浩司を目撃している。何らかの障害によって黒田は羽田浩司を守ることができない状況に陥っていた。

②羽田浩司を殺したのは黒田か?

黒田が羽田浩司をもし殺していたとするならば、なぜ17年前の倒れている羽田浩司の記憶を若狭留美と並べて考える必要があるのかというとことが非常に不可解です。並べて考えているというシーンは若狭留美が羽田事件に関与していることを疑う思考としか考えられませんし、若狭に「警察を呼んでいいか?」と牽制している言動を見ても黒田は羽田事件の真相を追う立場、すなわち正義側であると判断していよいと思われるので黒田は羽田浩司を殺してはおらず、もともと17年前も正義側として羽田浩司のSPを担当していたのだと思います。
(まとめ)
黒田兵衛は17年前も現在も白(正義側)であり、羽田浩司を殺しておらず現在でも羽田事件の真相を追っている

〈H.「浅香と黒田兵衛」のピース〉

①若狭から見た黒田
若狭は黒田の顔をみて衝撃を受けたような顔をして黒田を睨んでいた。⇒「若狭は過去に黒田に会ったことがある+何かしらの反抗心を黒田に抱いている」ということになる。さらに若狭は黒田に対して「気になる人物を観察するために、業火に包まれるテントを野放しにしたのでは?」という発言をしているが、これは17年前の羽田事件でも同じように黒田が被害を未然に防ぐよりも犯人を逮捕するという私欲を優先したという過去の失態を追及した示唆だったのではないかと考えられます。
(まとめ)
若狭は過去に黒田に会ったことがあり、何らかの怒りの感情を抱いている。

②黒田から見た若狭
黒田は若狭の名前のアナグラムに気づいており、若狭と羽田事件との関係性を疑っているような様子がうかがえます。さらにこっそりと若狭の様子を観察しており、若狭と対峙したときひは「警察を呼んでいいか?」と尋ねて牽制している。すなわち黒田は若狭が警察から追われる立場()なのではないかと疑っていることがわかります。
(まとめ)
黒田は若狭のアナグラムを読み解いており、若狭が羽田事件に関わる組織の人物だと思い観察していた。対峙した際も「警察を呼んでいいか?」と聞き牽制していた

③羽田事件における関係
この二人の過去の回想は全くないため現在の関係をヒントに考えていくしかありませんが、若狭の言葉から黒田は事件当時に被害者の生死よりも犯人逮捕を優先した可能性があります。また浅香が組織を裏切って羽田浩司を殺した偽装工作をしたという線でいくなら、黒田は浅香が羽田浩司を殺したと思い羽田浩司の生死確認などよりも浅香逮捕を優先して動いたと解釈できます。その間に羽田浩司がRUMにより殺されてしまい、若狭は黒田に恨みをもっているとも考えられそうです。
(まとめ)
黒田は浅香に出し抜かれて、羽田浩司を殺されたと思い込み、羽田浩司の生死を確認せず犯人だと思われた浅香逮捕を優先した可能性がある

〈I.「羽田浩司と
RUM」のピース〉

①羽田浩司を毒殺したのは?
APTX4869を用いていることから黒の組織の人物であり、浅香は羽田浩司を殺していないと推理しました。となると羽田浩司を殺したのはRUMであることが消去法でわかります。
(まとめ)
羽田浩司はRUMによってAPTX4869を飲まされ死亡

〈J.「浅香と
RUM」のピース〉

RUMの目的
RUMにとって今回の仕事=殺しは今まで推理してきたように組織が計画していた「羽田浩司の暗殺」だったと思います。しかし浅香一人に任せるのではなく自分が出向いたとなるとRUMは浅香の援護をする必要があったor浅香をそこまで信用していなかったということが考えられます。
(まとめ)
RUMは浅香の援護or浅香への不信感があったため、羽田浩司の暗殺計画を成功させるべく現場に赴いた

②浅香の右目
若狭の右目の視力はほぼないことを示す描写があります。そしてこの右目の負傷は、「燃えるテントの怪で義眼になりかけたという話に反応して将棋の駒を握りしめていたこと+羽田浩司の死体をフラッシュバックしたあと右目を抑えながら倒れ込んでいた」ことを総合すれば、羽田事件で右目を負傷したことは間違いないでしょう。ではなぜ負傷することになったのかということですが、若狭の実力ならお互い向き合って戦って目を潰されることはほぼないと思うので、何かしたらの不覚をとっていた隙に攻撃を受けてしまったのだと思います。またフラッシュバックしたときに右目を抑えているので、このシーンの直後に受けたダメージだと予想されます。すなわち、浅香が羽田浩司の吐血した死体をみてショックを受けている隙に浅香の裏切りに気づいたRUMが、浅香の右目を攻撃したのではないかと思われます。
(まとめ)
浅香が羽田浩司が吐血して倒れている姿をみて衝撃を受けている隙に、浅香の裏切りに気付いたRUMが浅香の右目を攻撃した。

RUMの失敗
ジンの証言によりRUMは羽田事件において何かしらの失敗をしています。若狭が羽田浩司の将棋の駒をもち続けていることから、おそらく浅香は組織を裏切ったことがバレたが逃走に成功したのだと思います。またRUMは無事計画の核であった羽田浩司を殺すことに成功しましたが、羽田浩司によって黒幕の存在を示すダイイングメッセージを残されてしまいそれに気づけませんでした。よって「RUMの失敗=裏切り者である浅香を逃した+羽田浩司にダイイングメッセージを残されてしまって」ということではないでしょうか。
(まとめ)
RUMの失敗=裏切り者である浅香を逃した+羽田浩司に「CARASUMA 」というメッセージを残された


ここまで見ていただきありがとうございました。これで《羽田浩司殺人事件考察 ピース編》は以上です。次の《羽田浩司殺人事件考察 全体像編》では今回で得られたピースをつなぎ合わせてできる一枚の絵(全体像)を復元していきます。文字による表現なので小説のような形になりますが、そちらも楽しんで読んでいただけると嬉しいです。

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